昨日からの続き。それぞれが自身の日常から切り離され、原江教授の護衛という任務を与えられたここまで。唯一、普通の人間である子嚢崎はどんな活躍を見せるのか。そんな場面を描いていく今回の話。



・その時不思議なことが起こった(PC①覚醒パート)

子嚢崎は世良屋に連れられてラーメンを食べた後の帰り道であった。目当ての店に行けて上機嫌の世良屋に対して子嚢崎の表情は浮かないものであった。これを見ただけで彼らの味覚の違いが窺い知れる。

世良屋「な?神河屋最高だったろ?」

子嚢崎「……俺はもういいかな。」

世良屋「なんでだよ!お前わかるか?角煮ラーメンと角煮丼をセットで頼むといつまでも角煮の旨さを楽しめるんだぞ。こんなことできるの神河屋だけだ。」

子嚢崎「お前が行きたがってたから敢えて言わなかったけど、なんかがっかりしたわ。

世良屋「……ま、とにかく夏は長いし、また食いに行こうぜ。じゃあな。」

子嚢崎「俺はもういいかな。(二回目)じゃあな。」

幾分かのわだかまりを残しながらも子嚢崎は世良屋と別れて一人、家路を歩いた。すると進んでいく道の先に見慣れない車が停まっているのが見えた。見慣れないといってもついさっき見たことがるという矛盾も生じた。

子嚢崎「あれは……。」

その車の正体は先ほど学校で見かけたもの。あの少女が乗っていた車であった。そうかと思うと今度は何やら大きな音が聞こえた。物音だとかそんな生易しいものではない。それは明らかに銃声だった。そこで彼は明らかに周囲の様子がおかしいことに気づく。目の前の車もまるで乗り捨てられたようにドアは開きっぱなし。周囲にも人気はない。子嚢崎は恐る恐る銃声が聞こえた路地を覗いてみる。するとそこには黒服の男たちと交戦する御井の姿があった。

黒服「ザッケンナ、コラー!」

黒服たちと拳銃を打ち合う御井の姿は普段学校で見かける彼女とは天地ほどかけ離れたものだった。まさか同級生が校外で銃を打ち合っているなんて誰が想像するだろうか。

子嚢崎「ちゃんミイ!どうしてこんなところに!?」

いきなりの非日常的展開に驚く子嚢崎であったがさらに日常は彼から遠ざかっていく。今度は一人の少女が彼のもとに走ってくるのが見えた。近づいてくる影は段々と鮮明になってきて、その姿が件の少女であることが子嚢崎にも視認できた。問題はその背後から迫る者だ。まるで世紀末の世界からやってきたような浮世離れした見てくれ。筋骨隆々な体躯にモヒカン頭の獰猛な表情を浮かべたチンピラが彼女のことを追っていた。子嚢崎はその様子からだいたいの状況を察した。そして彼は少女、原江 真魚を守るようにチンピラの前に立ちはだかった。

「あぁ?なんだ手前ぇは。俺はその女に用があるんだ。さっさとどけ。」

子嚢崎「あ?やんのか、おい。」

元来の正義感、firesの頃から変わらぬ熱い血を滾らせ子嚢崎は臆することはなかった。むしろそのままタイマンでも張りそうな勢いである。

「小僧が。そんなに死にてぇか。」

そういうとチンピラは両の拳を打ち付けるように構えた。するとその左右の拳にはそれぞれ熱気と冷気が宿っているかのように見えた。その様子を見て子嚢崎にも目の前の相手がただのいきがった輩ではないことが理解できた。

「イェアぁぁー!!」

チンピラは目にも止まらぬ速度で前進すると左右から挟み込むように両の拳を子嚢崎に叩き込まんとする。
ここで回避ロール。ダイスを振って目標値を超えればこの攻撃を回避できる。(実際のロールでは残念ながら失敗)
熱気と冷気、二つの異なるエネルギーを込めた拳が超高速に乗せられて勢いをつけて子嚢崎の体に叩き込まれる。子嚢崎の体は二、三回バウンドしながら地面を転がった。

「二重一点!」

チンピラは左右の拳を再び打ち付けながら満足気に叫んだ。渾身の一撃を叩き込み、地に伏す相手を見下ろした。

子嚢崎「全然痛くねぇ。

渾身の一撃を叩き込まれたというのにまだ意識があることにはさすがのチンピラも驚いた。しかしさすがに異能力による攻撃を受けた体がただで済むはずがなく、子嚢崎は口で抵抗するのがやっとであった。立ち上がってこないのを確認したチンピラは真魚に向き直り、彼女を再び連れ去ろうとする。このままでは彼女を守れない。どうすればいいのか。

その時不思議なことが起こった。

なんと地に伏す子嚢崎の体から影がひとりでに動き始めた。そして真魚に近寄るチンピラに影を伸ばし、攻撃をするのだった。まるで影に自身の意志が投影されているかのようであった。

「な、なんなんだ。こいつは。まさか、こいつもオーヴァードに!?」

たじろぐチンピラに追い打ちをかけるように今度は銃弾が襲いかかる。黒服の相手をしていた御井が戻ってきていたのだ。彼女は銃口をチンピラに向けると容赦なく引き金を引く。

「ち、面倒なことになったな。一時引き上げだ。」

分が悪いとみたのかチンピラはあっさりその場から退散してしまった。御井はまう二人の安否を確認する。

御井「大丈夫ですか?」

真魚「私は大丈夫です。でも、この方が私を助けようとしてくれて……。」

御井「この人って……子嚢崎くん?」

子嚢崎「ちゃ、ちゃんミイ。何してたんだよ、こんなところで。」

御井「私のことなんかよりも子嚢崎くんは大丈夫なの?」

子嚢崎「全然痛くねぇ。

すると遅れて荒坊も戻ってきた。どうやら敵に長く追われていたらしくたんこぶが頭にできている。

荒坊「真魚さんは無事だったか。ん、もう一人のこいつは誰だ?」

子嚢崎「あ?誰だ手前ぇは?

子嚢崎はゆっくりと立ち上がりながら荒坊を威嚇する。だが激しい攻撃を受けた体が無事なはずもなく彼はすぐに姿勢を崩す。

子嚢崎「やっぱ、ちょっと痛ぇや。」

そう言って彼は地面に倒れ込んだ。荒坊と御井はすぐに彼を担ぎ起こすとそのまま車に乗せた。辺りにはもう敵の残党もいないようであった。荒坊はすぐに車の運転を始める。

荒坊「とにかく神河支部に戻ろう。医務室に運び込むんだ。」

荒坊は一同を乗せた車を飛ばし、神河支部へと向かった。こうして子嚢崎も期せずしてこの陰謀渦巻く事件に足を突っ込むことになっていくのであった。

ここの回避ロールでは達成値を超えているとチンピラの攻撃を回避。結局、背後にいたもう一人の仲間からの攻撃を受けてしまうのですがこのことが後の情報収集で活きてくるという設定でした。ちなみに登場させ忘れましたが車は今田が運転していました。つまり時系列的に前回のロールも⑤→④→その他の順番の方がしっくりきてたかもしれません。



今回はここまで。次回は神河支部の面々と子嚢崎が対面します。

to be continued...

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